絵に描いた餅だけ食べたかったけど今は棚からぼた餅でもいいと思ってる

節度を守らず書きたいことだけ。汚い感情も整理して書いておく自分のためのブログ。

‪野ブタ。のいじめシーンが結構きつかった

先週の土曜日、ドラマ「野ブタ。をプロデュース」を観ました。ものすごく久しぶりに。

 

そうしたら自分の中でまあまあな印象操作が行われていたことに気づきまして、愕然としました。ちょっと、このいじめ描写えぐくない???

私は木皿&河野トリオ作品信者なのでこんなセンセーショナルなシーン入れてくる人たちだっけ、とものすごく驚いてしまいました。私の中でのお三方のイメージはドラマ「Q10」の「愛も勇気も平和も、この地球上にあると思えばきっとあるのよ」というやさしいまなざしそのもの、だったので。

 

 

こういったツイートをしていましたし、この気持ちもウソじゃないんですけど、でもやっぱりあの暴力描写はしんどかったです。

 

転校生の、机を払うしぐさをきっかけに、無視、暴言、お弁当がっしゃん、トイレで水かけ、人としての尊厳を無視している。ひどいです。

 

でも、目に見える物理的な被害がある分、わかりやすいですね、と一歩引いた目線で見てしまったのも事実です。というのも、野ブタ。から10年以上経っても学校現場からいじめという名の暴力はなくならず、手段も多岐に渡ると窺い知れるからです。

 

昨年は仕事柄、限定的ではありますが学校関係の方と、あるいは現役の学生さんと話をする機会が複数回ありました。

 

個人的に私が驚いたポイントを挙げますね。

 

・もう「LINE交換しよう?」ではないらしい。「insta交換しよう?」らしい

・位置情報共有アプリで友だちがどこにいるのか(それこそ自宅か、学校近くの駅に向かっているところか)いつでもすぐにわかるらしい。

・学校では4人でいるけど、放課後わざわざ3人で出かけてstoryあげて私の時代でいうところの「ズッ友だょ」的なやつやるらしい

 

何が言いたいかというと、今いじめが起こるのであればそれはきっと、学校という場所で起こる物理的被害を伴う何かではなく(その場合ももちろんあるでしょうが)、目に見えない、本人以外気づきにくい分孤独を余計に感じやすい、出口のない、行き場のない、自分でもきっとうまく説明ができない、しんどい、そういう形の伴わない何かなんだろうな、と思ったわけです。

 

位置情報共有とかほんとしんどい、それだけでしんどい神経を疑うわ、と私は思ってしまいますが、彼らはそれが普通で当たり前なのです。その当たり前の枠組みの中でなんとか生きていく方法を探っている彼らをサポートする学校の先生たちを心底、尊敬しています。

いじめが起きているとわかって、仮にそれがネット上でのことだった場合、学校としては犯人探し(匿名アカウント情報の開示)などはできません。範疇を越えているからです。学校をきっかけとしたコミュニティで起こっていることなのに、自分の生徒を守り切れないと歯がゆい思いをしている先生の話も聞きました。きっと連携システムはあるけれど、それを運用する余力が現場にもないのだと想像しています。本当に、本当にあまりご自身を責めないで、と思いました。

いいかわるいかではなく、事実としてそこにあるのは、傷ついた生徒がいること、だから何が起こったか、というよりまずはその気持ちに理解を示す、寄り添っていきたいというステキな先生の気持ちが生徒さんにも伝わるといいですね、きっと伝わっていると思いますよ、と完全に部外者な私は当時思ったわけですが。

 

10代の皆さんの話も聞いていくうちに、なんだか仲間うちルールがそこかしこにあるんだなあ、私の頃よりそれが顕著だ、と感じたりもしました。

これはムラ社会化している、良い面もあるだろうけど、だからしんどい、という子もいるだろうなあ、と感じました。見えない生きづらさを抱えて生活している誰かが、ほっと一息つける場所が物的にも、精神的にもあればいいなあと思いました。

家、学校以外で。だって家が安全かどうかなんて、当人たちにしかわからないですもんね。

 

私にとっての3番目の場所はたぶん、高校時代はアルバイト先や学校ちかくの喫茶店でした。なんとなくで学校に行けなかった勢でしたが今振り返ると劣等感で押しつぶされ、現実とうまく向き合えずに、なんとなくほっといてくれる場所がほしかったんだろうなと思います。

 

堀北真希演じる主人公も、修二も彰も、3番目の居場所で力を蓄えて、不合理な現実に向かっていくから本当に強くて、最終的には元気の出る素晴らしいドラマなんです、野ブタ

 

なにが言いたいかというと、先週の放送でうわ~と思っても、ちょっと思い出してみてもらえませんか、ということ。

 

私は柳の木と自分を重ね合わせて「置かれた場所で生きていこう」とする野ブタ。のシーンも、「さっきいじめっ子をいなくなれと願ったのはうそです、さっきの願いごとを取り消してください」と言ったシーンも、カットされてたけど世界平和を祈る彰のすぐあとに豆腐屋のおっちゃんが世界平和取り消すシーンも、全部全部好きです。

ママが飛行機事故で死んでなかった、同姓同名の別人とわかったあとに、「それでも世界のどこかには、今悲しみに暮れている家族がいるってことだよな」と言えるお父さん、それを差し込む脚本、カットしなかった決断も、本当に本当に大好きです。

 

迷いながら、苦しみも抱えながら、それでもよりよき未来を信じて進んでいけるように、大人が背中を押している、世界とはかくあるべき、と思えるこのドラマが私はすごく好きです。

 

演出が細かいなあと思って大好きです。役者さんたち、本心じゃないセリフいうときちょっと顔がゆがむんです。

シーンは過激なところが確かにありますが、まじりっけなし、うそやまやかしで甘えさせない、繊細で正直で懸命なドラマをまた地上波で見れることに幸せを感じています。

 

※原作について※

白岩玄さんのデビュー作です。

初めて読んだとき、すごいエッジの効いた人が出てきたなと思いました。

えぐすぎたんです。辻加護加護ちゃんを出してくるところとか、最後のシーンの描写とか。私は読んだとき頭の中で教室にいる修二を残して舞台が暗転、修二にだけスポットライトがあたって、天を仰ぐ彼はそのまま、画面が引いていく、という光景が頭に浮かびました。

救いのなさがえげつないんですよ。読んだあと、現実に戻ってこれたことに安堵する作品です。

個人的にはこの『野ブタ。をプロデュース』と『「り」は「め」より100倍恐ろしい』と『桐島、部活やめるってよ』と『その日、朱音は空を飛んだ』がグループひとくくりになっています。

 

あと木皿泉&河野さん作品はサイコーなのでぜひ次は「Q10」もお願いします!